1/24/2012

恐怖のひき肉

アラバマに越してきてそろそろひと月、娘は毎日よく食べ、ふくふくと育っている 本当なら一日中ずっと娘と遊んでいたいところだが、そろそろ博論再開しないといけないので、涙を飲んで文献読んでいる 

娘の世話は夫のお母さんがしてくれるので、それはいいのだが、もう彼女が娘にべったりで逆に困るほどだ 朝自分たちの部屋で授乳して、その後ミルクを取りにキッチンに娘を抱いて行こうものなら、両手広げて待ちかまえている 「忙しそうだから代わりにやろうか?」という聞き方をされるのだが、その実自分が娘といたいのがあまりにも明らかだし、こっちはいやだとは言えない訳だから、少しずるいと思う そんなわけで日中は基本的に、グランマのデイケア状態、一緒にいられるのは授乳中だけで、終わったら両手広げて待たれているのでろくに遊んだりなどできない(一度などは授乳中に部屋の前まで来てどれくらいかかる?って聞くので、あと20分くらい、と答えたら、キッチンタイマーセットして待っていた 笑) 向こうも悪気はなくて、手の込んだ意地悪とかするタイプの人でもないし、純粋に助けようとしてくれている部分も多分にあるのだが、こうやって引いた目で書けるようになるまでには、わたしの中ではそりゃもうさまざまな感情が渦巻いて大変だった まじでPPDかと思ったわ

こんな流れになっている根底には料理問題がある 年末に引っ越してきた当初、お母さんはフロリダでの展開をすべて忘れたかのように、正月気分とか限りなく無視で牛ひき肉料理を連続で用意した(しかも同じ料理のローテーション) 付け合せの野菜はもちろん全部缶詰、しかも缶の中身を鍋にぶちまけて温めただけのが、水気も切らないまま出てくる感じとあって、あ、こりゃやっぱだめだ、となる せめて何かもうちょっとバラエティのある食材を買いたそうと、お金だけもらって買い出しも代行するが、行く前に何か買ってくるものある?と聞くと、
母:「ええと、そうね、牛ひき肉。」 
...。 幸いその場では夫が「冗談だろ。」とわたしの気持ちを120%代弁してくれたため買わずに済んだが、結局あとでお母さん、こっそり買い物に行きひき肉買い足していた 笑 なんか彼女は、有り合わせで適当に料理するということができない人で、急にその日になって料理を頼むと、文字通りパニックに陥るのである 自分のよく知っている材料(主にひき肉、たまにポークチョップ、ソーセージ)を事前から準備しておいて半日がかりで料理するっていうのしかできないらしい それだと結局、同じものばかり食べ続けることになる ということでやっぱり、わたしが基本的に料理することになった

そんなある日、アル中のJ叔母からお母さんに電話があり、娘を見たいから、一家で週末パイを持ってやってくるという なんとなく流れ的にこちらが食事を用意するらしい、とお母さんは言うのだが、もちろん自分が料理したくないのは明らかなので、これまたなんとなく流れ的にわたしが料理することになる 「前に作ってくれたあの豚肉の料理(とんかつのこと)はおいしかったからあれ作れば?」と提案されるが、日本料理に慣れてないどころではない叔母一家に、主菜、ごはん、味噌汁、みたいなメニューを出すのは正直ハードル高すぎると思い、かといって、とんかつを始めとした一品料理を6人分とか作るのは負担が大きすぎる というわけで、苦心の末酢豚と炒飯とクラブラングーン(こっちのチャイニーズでよく出てくる、ワンタンの皮にクリームチーズと蟹または蟹かまをつつんで揚げたもの)を作ることにした 

ともあれ、前日になって夫がおばさん明日何時に来るの、とお母さんに聞くと、「え?わからない たぶん午後じゃない?」と ディナーを準備すると思っていた夫はわからないって何だ、とキレるが、わたしは実はこの展開予想していたので、黙々と酢豚の材料を切り刻み、豚肉に下味をつけて次の日に備えた(3時間に一回授乳なので、準備はできるうちにしておかないと時間がまるでない) で、当日、起きて、授乳して、あとはもう黙々と料理し、あとはクラブラングーンを揚げるだけ、というところで、叔母から電話 「えっもうご飯食べちゃったよ!何も作らなくていいって言ったのに」って、まーじーでー! 結局、ほぼわたしの面目を保つためだけにクラブラングーンをスナックがわりに出したら受けたようで、叔母は酢豚にも興味を示して豚肉だけ全部食べて帰った 笑 しかし丸く収まったとはいえ、この一件にはさすがにげんなりきた

ずっと料理しているのもそれはそれはストレスなのだ 料理して食べたら一時間半はロスするし、授乳の合間を縫って他のこともしなきゃいけない 大体料理している間、お母さんは娘と遊んでるわけで、なんやら割に合わない 遊ぶのならわたしにだってできるっていうか、むしろそっちをやりたいよ的な 結局彼女は料理ができないので、ますます自分の使命は孫と遊ぶこと、とばかりにそっちに邁進してしまう
で、試行錯誤の末、一日置きに交代で料理しようと今朝提案してみた お母さんの料理も、わたしらがけっこううるさいので徐々に改善されてきている(気はする)し、これがいろんな意味での妥協点だと思う

この一件でかなりわたしも疲弊したのだが、何か学んだことがあるとすれば、どうやら自分は料理がうまいらしい、ということだ(単に比較の問題かもしれないが。。。) あと、ホームステイ先の料理がまずくてしんどいって言う留学生の気持ちが、ちょっとわかったような気がする 笑 まあ諸々のこともあと一ヶ月の辛抱(3月にはわたしらが日本に行き、お母さんは韓国に帰るため)だから、耐えるしかないかな

1/18/2012

ある日、南アラバマにて

自嘲気味に気に入っているシンプソンズのエピソードに、大学院生についてのものがある
カートが大学院生をバカにしているのをマージがたしなめて、"Don't make fun of grad students--they just made a terrible life choice" というのだ(下記参照)



この前唇がひどく荒れてガサガサになり、ふつうのリップバームでは全然効果なくてかぶれたようになったので、(またしても)ウォークインクリニックに行くことにした ネットで調べたら、ドクター・グプタと言ってなんやらインド系のお医者さんらしい この医者にはおばあさんが一回かかったことがあり、何にもしてくれなかった!と文句たらたらだったが、まあ他に選択肢もないし、と娘を夫のお母さんに預け、授乳時間の合間を縫って出かけることにした

道すがらマージの台詞を思い出しつつ、確かに自分たちは大学院なんか行っちゃって人生の選択を誤ったよな~と、冗談まじりに話しているうちにクリニックに着く 12時半くらいだったが、窓口に行くと、「ドクター・グプタは2時まで戻りません」と オフィスアワー9時から5時までって書いてあるのにいないんかい、とさっそくイラッとして、もう今日は諦めようかなあと車に戻ると、エンジンがかからない 

うちの車は電気系統がいかれていて、時々セキュリティロックがかかってエンジンがかからないことがあったのだが、去年だったかこの件で修理に出したので、もうすっかり直ったと思っていたのに、また壊れたみたいだ 修理に出す前はよく、夫がエンジンの蓋を開けて、誰かにアクセルを踏ませつつスクリュードライバーをどこやらに差し込み火花を散らせてエンジンをかける、という原始的すぎる方法を取っていたのだが、さすがにもう直ったと思っていたので今日はスクリュードライバー用意してないと言う 笑

しかし、夫曰く、この症状はしばらく待っていると直ることがあるらしい 以前夫とAがモールに行ったときにも動かなくなったけど、ペットショップで暇つぶしてまったく予定外に熱帯魚とか買ってる間に直ったという というわけで、他にどうしようもないので、近くで何か食べて2時まで待ってドクター・グプタに会うことした 授乳時間までに帰れないので、娘にはミルクをあげるように夫のお母さんに電話で頼む 

クリニックが入っているストリップモールには飲食店らしきものはないので、なんかこのイベント自体が貧乏院生生活のパロディみたいだよな~、とか言いながら、とぼとぼと道を歩いていくと、Chick & Sea Restaurantの文字と、間の抜けたグーグーガンモみたいな鶏と魚の躍る看板が視界に入ってくる そのローファイ加減に、思わずへらへらと力の抜けた笑いが漏れる 見るからに鄙びた感じのレストランで、フライドチキンやシーフードを使った家庭料理の店のようである 周りにはほかにサブウェイしか見当たらないし、これも何かの縁だからというわけで、吸い寄せられるようにして入っていってみると、中はお年寄りで超満員であった 老人の群れに混じり、夫はシュリンプポーボーイ、わたしはオイスターポーボーイを食べ、デザートにぺカンパイも頼んだ それなりにいける味だ ゆっくりと食事して1時を過ぎたころあたりを見回すと、店一杯にいたじーさんばーさんたちが忽然と消えている お年寄りは実に規則正しい生活を送っているようだ

レストランを出て車に戻ると、エンジンがかかった!この機を逃してはならんと、夫には家に帰って別の車を持ってきてもらい、わたしはドクター・グプタに会う たしかにインド系のおっちゃんだったが、診察が30秒で終了したため特筆すべきこともなく、処方箋をもらって帰る 帰りはおばあさん(クリスマスで帰国した夫のお父さんにくっついて韓国に行ってしまいいないのだが、それはまた別の話)の車に乗ったが、走ってる間中ずっとただならぬ異音を立てていたので、どっちかっていうとこの車のほうがやばいんじゃないのという感じだった トラブルのない車には、どうやら縁がないらしい