3/26/2011

谷川俊太郎、「蝶と蟻」

故あって、地震や天災と何かしら関係のある日本の小説や詩を探している
といっても思い浮かんだめぼしいものは村上春樹の「神の子どもたちはみな踊る」ぐらい―どなたか何か知りませんか

とにかく、ネットでいろいろと検索していたら、谷川俊太郎が四川大地震の時に書いた「蝶と蟻」という詩(『現代詩手帖』2008年8月号掲載)が、けっこうな数、ツイッターで引用されていることがわかった 引用部分は以下の通り―

蟻たちはその小ささによって生き残った
蝶たちはその軽さによって傷つかなかった
しなやかな言葉もまた大地震に耐えるだろう

しかし、さらに検索していくうちわかったことには、元々の詩はどうもここでは終わっておらず、さらに二行続くのである(原本が手元にないのでさらに続いている可能性もはっきりいってあるが、ネットに転がっていたのを見つけた中で、これが一番長いバージョン)


だが今は言葉を慎んで私たちのうちなる沈黙の金を
四大に伏した者たちに捧げよう

全日本漢詩連盟のウェブサイトより引用)

この二行があるとないとで、読後感はかなり違うのではないだろうか 少なくともこの二行では、詩人は、いたずらに語ることよりも、沈黙し死者を悼もう、と言っているように思える

一方、ツイッターでこの詩が広まっていく過程でこの二行はいわばカットされ、改変されたバージョンが出回っていった 
最初にこの詩についてツイートした人が、最後の二行を意図的にカットしたかどうか、ということはもはやわからない この二行を削ってしまうと、詩人がもと言っていたこととははっきり言って正反対の詩になっているようにも思える 
にもかかわらず、詩人には失礼ながら、わたしにはなんとなくこの汎用版(?)の方が、いまこの地震について、黙して喪に服するには、どうしてもまだ早いような気がして、とりあえずなにかを語りたいと感じている人たちのニーズに、どことなく合っているような気がする  実際、詩をリツイートしたあとに、「しなやかな言葉」というフレーズについてコメントを書き加えている人も多かった 



しつこく言うとわたし自身はめんどくさいのでツイッターやっていないのだが、この件についてはなんだか、オリジナルを凌駕して新しい詩が生成していくのを目撃したようで、ちょっと面白かった





4 件のコメント:

  1. あー
    私もこれ、来週のイベントでやるpoetry readingに使わせていただいてもいいですか?
    今用意しているものにプラスして読もうかなと思います。

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  2. meggieさん、

    ぜひどうぞ!つかわたしが許可を与えるようなアレではないのかもしれませんがw 
    わたしもとあるベネフィットコンサートで朗読する素材を探しているんですが、なかなか適当な長さのものってないですね ちなみに今用意しているのって、何ですか?

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  3. 匿名4/05/2011

    私昔趣味で朗読をやってたもので、横着して昔やったことのある「永訣の朝」をやりました^^;
    日本語がわからない人にも、悲しみとか力強さとか静かさとかが伝わりやすくて好評でしたし、ついでに日本の東北の事情なんかも説明できてよかったです・・・長すぎたけど。

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  4. あらそれは奇遇 こちらも朗読者さんのたっての希望で宮沢賢治になったのですよ
    「雨にも負けず」と「永訣の朝」の二本立て
    ちょっと長いよね。。。でも楽しみです

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